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「拝み屋怪談 来たるべき災禍」はジャパニーズホラー版マトリックスだ! [本・コミック]

郷内心瞳さんの著書は、
怪談始末」「花嫁の家」「逆さ稲荷」「禁忌を書く
すべて読んでいます。

今回の新刊
拝み屋怪談 来たるべき災禍」も非常に楽しみに
待っていました。

拝み屋怪談 来たるべき災禍 (角川ホラー文庫)

拝み屋怪談 来たるべき災禍 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 郷内 心瞳
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 文庫


読了しましたので、以下、感想です。

まず、これまで、郷内さんの著書に何度も登場
している
「桐島加奈江(きりしまかなえ)」
が、今回のメインテーマです。

郷内さんの頭の中から抜け出し、実像を結んで
他者からも認識されるようになってしまった
化け物・桐島加奈江。

郷内さんのみならず、奥さんにも害を及ぼす
存在となってしまいました。

これまでは、ひたすらに怯え、逃げ惑うだけ
だった郷内さんが、桐島加奈江に真っ向勝負を
挑みます。

と書くと、いかにも銅剣を片手に、
「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!」
と九字切りをしそうなイメージですが、
そういうことではありません。

そもそも、桐島加奈江とは、何者で、どういう
存在なのか?が明らかになっていないので、
手の打ちようがありませんから。

そんなわけで、桐島加奈江という化け物を、
科学的に、論理的に解明していこうというのが、
今回の物語の導入でもあります。

文章の構成も面白く、二つの時間軸が
クロスオーバーしています。

一つは、
終わりへ向かいて 6章から0章

赤くて暗い水の中にいる。
自分がどうしてここにいるのか分からない。
記憶をたどりながら、意識を取り戻すまでの
時間の流れ。

もう一つは、
怪物の夢 1章から6章
これは、桐島加奈江にまつわる回顧録。
他の著書で、断片的に語られていた
桐島加奈江にまつわる話が、今回の著書では
章ごとにまとめられています。

ミステリー、謎解きの要素を含みながら、
化け物と対峙する。
そういう図式になっています。

桐島加奈江の正体は、まぁ、およそ解明
できるものでもないのですよね。

科学的に説明できるものならば、
恐れる必要もないわけですし。

そんな考察をしている中で、
以前、桐島加奈江を著書に載せたところ、
日本全国から同じように、不可解な怪異を
誰にも言えずに悩んでいるという便りや、
依頼をいただいたというエピソードが秀逸
でした。

特に、「明晰夢」や「ブレインロック現象」
について触れられているのですが、これらに
ついては、初めて耳にする言葉であり、
現象でもあったので、かなり戦慄が走り
ましたよ。

だって、幽霊の見える・見えないは、
僕自身が見ようと思っても、見れないから、
少し安心できるのですが、
「明晰夢」や「ブレインロック現象」は
いつ、自分の身に起きてもおかしくない
リアリティや恐怖があります。

脳が「自分は死んだ」と認識すると、
実際に死んでしまう。
それが例え、夢の中の出来ごとであっても。

他者の事案など、多角的な視点から
桐島加奈江という化け物を分析していく
ことで、いくつかの推論が立てられ、
最終的には
「桐島加奈江という化け物は、こういう
 存在なのだろう」
という結論が出ます。

結論が出たといっても、それを証明する
ことはできないので、あくまでも、著者の
郷内さん自身が納得した、という話なの
ですが。

桐島加奈江との鬼ごっこや、明晰夢での
対決に関しては、怪談というよりも、
どこかSFっぽくもあり、ファンタジーの
ようでもあります。

もともと、郷内さんは何かのインタビューで
ゲームもするし、漫画も読むと言っていたので
映画だとかアニメなんかもお好きだと思う
んですよね。

いや、僕も大好きなので、なんか分かるの
ですよ。

この、ファンタジー感とか、SF感といった
ものが、そういうエンターテイメント作品に
インスパイアされたものではないかなと。

桐島加奈江が、郷内さんの脳みそが生んだ
怪物であれば、その対決も、郷内さんの
脳みそが生んだ世界なわけです。

だから、そういうエンタメ作品に根付いた
表現であったとしても、なんら不思議では
ないわけです。

Amazonのレビューでは
「ライトノベルのようだ」
と酷評されている方もいましたが、
ある意味、それが的を得ているのかも
しれませんね。

自分が作り出した化け物と対峙して、
最終決戦の末、一時の和解。

そこから転じて、
真のラスボスバトルに突入。

悲劇のバッドエンドの中にも、淡い
初恋への惜別と、現実世界への回帰。

化け物だと思っていたものは、実は
自分自身を映し出した鏡だった、
というのも、どこかで聞いたような
話です。

物語としても、あまりにもきれいに
まとまり過ぎているので、
「まるで、ライトノベルのようだ」
と思われた方もいるのでしょうね。

いっそのこと、全12話くらいのアニメに
してくれたら、面白い作品になりそう
です。

まずは、漫画化からですかね(^^)

それくらいに、読んでいて映像が鮮明に
浮かんでくる描写でした。

僕自身は、ライトノベルというよりも、
SFに近い印象を受けたんですよね。

今回の「拝み屋怪談 来たるべき災禍」を
読了して、一番最初に思い浮かんだのが
キアヌ・リーブス主演の映画「マトリックス」です。

「明晰夢」を操り、夢の中の現実を無に帰す
神のごとき能力は、「マトリックス」の
クライマックスで、キアヌ・リーブス扮する
ネオが、マトリックス世界を我が物として
操る、あの能力に酷似しているように思い
ました。

いや、それを批判しているわけではなく、
むしろ、それが、いいんですよ。

妄想だろうが、空想だろうが、本人が納得
することが大事なんですから。

その納得する味付けが、エンタメしてるなぁ
というところに、すごく親近感が湧きました。

もう一つ思い浮かべた映画は、
エルム街の悪夢」ですね。

僕が高校生の頃、ホラー映画ブームっていう
のがありまして、「エクソシスト」や
「ポルターガイスト」、「13日の金曜日」
なんかを、友達とビデオで鑑賞したのを
覚えています。

中でも、この「エルム街の悪夢」というのは
性質の悪い映画でして、夢の中で殺人鬼
フレディに追い回され、夢の中で負った傷が
現実に戻っても残っているという、ね。

主人公も、寝ちゃダメだ、寝ちゃダメだ
と思っていても、睡魔には勝てず、気が付くと
夢の中、という。

見ているこちらも、どこからどこまでが
夢なのか、現実なのか?という境界線が
曖昧になった感じの恐怖がたまらないわけで。

実際に、眠ることが、心底怖くなった、
ある意味、トラウマ映画でした。

桐島加奈江との鬼ごっこなんかは、まさに
フレディに追い回される感じですよね。

ただ、これは映画のように作られた世界や
脚本ではなく、郷内さんの場合は、現実な
わけですから、その心労たるや・・・ですよ。

ぐだぐだと、取りとめもない感想になって
しまいましたが、結局のところ、今回の著書は
郷内さんが抱えてきた、心の中の闇を吐露
するものであり、自問自答の私小説のような
ものです。

それ故に、これまでの著書とは趣きが異なって
いるので、「花嫁の家」「逆さ稲荷」のような
拝み屋怪談シリーズを期待していると、少し
肩すかしを食うかもしれません。

それでも、郷内さんが、桐島加奈江の事象を
自分なりの解釈で解明し、始末を付けたこと
には、意味があると思うのです。

それは、郷内さんと同じように、今もなお、
解決できない心の闇を抱えている人は
たくさんいて、そういう人達に対して、
この物語は一つの解決事例として、光明に
なるかもしれない、ということです。

そういえば、ふと思い出したのですが、
以前に、テレビの番組だったか、ニュース記事
だったかで、こんな話がありました。

不治の病を患った少年が、その病の元
(病原菌だか、がん細胞だか)をテレビゲームの
敵キャラと想定し、繰り返し、撃退していく
イメージを持ち続けたところ、その病気が
完治したといいます。

これって、「明晰夢」や「ブレインロック現象」
が、マイナスではなく、プラスの方向に
働いた事例ってことですよね、たぶん。

脳が「自分は死んだ」と認識すると、
実際に死んでしまう。
それが例え、夢の中の出来ごとであっても。

逆に、

脳が「自分は死ぬはずがない」と認識すると、
不治の病さえ、克服できてしまう。

どこか、
今回の「拝み屋怪談 来たるべき災禍」と
通じるところがあるように思いました。


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拝み屋怪談 来たるべき災禍 (角川ホラー文庫)

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  • 作者: 郷内 心瞳
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/06/17
  • メディア: 文庫



拝み屋郷内 怪談始末 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

拝み屋郷内 怪談始末 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

  • 作者: 郷内心瞳
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2014/05/22
  • メディア: 文庫



拝み屋郷内 花嫁の家 (文庫ダ・ヴィンチ)

拝み屋郷内 花嫁の家 (文庫ダ・ヴィンチ)

  • 作者: 郷内 心瞳
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2014/09/24
  • メディア: 文庫



拝み屋怪談 逆さ稲荷 (角川ホラー文庫)

拝み屋怪談 逆さ稲荷 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 郷内 心瞳
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/06/20
  • メディア: 文庫



拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

  • 作者: 郷内 心瞳
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/07/23
  • メディア: 文庫



拝み屋異聞 うつろい百物語 (イカロスのこわい本)

拝み屋異聞 うつろい百物語 (イカロスのこわい本)

  • 作者: 郷内 心瞳
  • 出版社/メーカー: イカロス出版
  • 発売日: 2017/06/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)




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